INTERVIEW
マッチング事例 インタビュー
Vol.4地域の中核を担うバス事業者が
100年先も価値発揮できるように
国内外で経営を牽引した経営人材を採用
背景・課題
長年経理財務を統括してきた役員が定年退職を迎えるにあたり、後任者を迎え入れたい。また、新規事業の推進や既存事業に対する財務内容などの数値根拠に基づいた経営陣への具申ができる人材を希望。
成果
配偶者の地元・十勝への移住を考えていた、国内外で経営者としての経験豊富な大手企業役員クラスの人材を幹部として採用。財務はもとより、社内の組織体制の変革にも取り組んでいる。
十勝バス株式会社
- 代表取締役社長
- 野村 文吾 様
- 顧問(財務・経理・ライフサポートグループ担当)
- 米田 孝 様
新型コロナウイルス感染症の影響下で、財務統括責任者の後任者を探す
十勝バスは、北海道帯広市を拠点とするバス運行会社です。1926年の創業以来、「生活の足を守る」という使命を胸に、お客さまの声に耳を傾け、地域の移動手段として信頼される企業であろうと事業に取り組んできました。厳しい時期もありましたが、2021年には「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の地方創生大臣賞、2023年には「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」の大賞をいただくなど、2026年の100周年を前に、一定のご評価をいただける企業へと成長しています。
しかし、交通事業者全体の課題として、バス運転手の人手不足、時間外労働の上限規制、社員の高齢化など、問題は山積です。加えて、長期化した新型コロナウイルス感染症によるダメージの後遺症により、経営の内情は厳しさを増すばかりです。コロナ禍に、長年財務を担当してくれていた米田が定年退職を迎え、弊社は、厳しい状況の中で早急に財務統括責任者の後任者を迎え入れる必要がありました。(野村)
地域金融機関だからできた、深い企業理解とグッドマッチング
私が65歳の定年を迎えた年に、新型コロナウイルスのパンデミックが始まりました。通常であれば退職するタイミングだったのですが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などによる乗客の減少、燃料高や乗務員不足など、経営に大幅なダメージがあることは明らかな状況でしたので、会社に残りました。コロナ禍は資金調達に必死でしたが、それが一旦落ち着き、帯広信用金庫様と日常の資金や経営の話をする中で、私の後任者が社内にはいないという話になりました。
当初は、金融機関の人脈を通じて紹介してもらえたらありがたいという気持ちの雑談から始まった話ですが、帯広信用金庫様は、長い付き合いの中で弊社のことを深く理解し、本気で考えてくださっていたのでしょう。すぐに地域経営サポート部につないでいただき、葉梨さんをご紹介いただきました。(米田)
100年企業の、その先の100年の基盤づくりに取り組む
葉梨さんは、想定以上の人材です。社長の言う通り、当初は財務統括責任者の後任者を探していたのですが、葉梨さんのこれまでのキャリアを拝見し、目先の財務だけでなく、100年先も続く企業であるための財務、そのための社内の組織改革にも取り組んでもらっています。
交通事業者は新型コロナウイルス感染症の影響がいまだに大きく残っており、回復が最も遅れている業界です。弊社も例外ではありません。葉梨さんには、2024年7月1日から出社いただいていますが、すぐに課題は財務だけではないと気づかれ、社員と一緒に一つ一つ、会社や組織を変えていこうとしてくださっています。その姿を社長も後押ししてくれています。
弊社は、もうすぐ創業100年を迎えます。しかし、100周年がゴールではありません。「会社そのものの在り方を変え、次の100年に向けて十勝バスを進化させる」という考え方に私も共感しており、その姿をぜひ見届けたいと思っています。会社全体の体制を整えることができれば、未来への道筋を示すことは可能だと考えています。(米田)
採用の決め手は、海外のグループ企業での経営の経験
私は4代目として十勝バスの事業に取り組んでいます。私が事業を引き継いだとき、弊社は赤字企業でした。3代目であった父は、当時私が働いていた東京まで、廃業の決意を伝えに来ましたが、私は、私の今があるのはバスに乗ってくださった十勝の皆さんのおかげだと気づき、翌日には引き継ぐことを伝えました。
まず始めたのは、社内の意識改革でした。今、葉梨さんがやろうとされていることは、私が十勝バスに入社した当時にやろうとしていたことと奇しくも同じでした。当時の私は孤軍奮闘で、社員に理解してもらうまでに10年かかりました。しかし、今の葉梨さんは、100年先の十勝バスがより良い企業であるために、一緒に変わろうとする社内の仲間を増やしてきているので、どんどんスピードをあげていくのだろうと感じています。
葉梨さんは、大企業で、経営に携わったことのある人材です。採用の決め手は、海外のグループ企業で経営を経験されている点でした。経営の見識があるのであれば、どんな組織体でも力を発揮してくれるだろうとの期待がありました。入社いただいて5カ月ですが、実際、相当に高度な理解がある方だと感じています。(野村)
十勝バス株式会社
- マネジメントグループ 経営企画室長(財務担当)
- 葉梨 新一 様
自身の経験を後進に返す機会を求め、REVICareerへ登録
大学卒業後、1989年にタイヤやゴム製品の製造・販売を行う企業に入社しました。私は車が好きだったのですが、自動車メーカー入社すると乗る車が限定されてしまうと考え、タイヤメーカーを就職先に選びました。ちょうど入社の前年にアメリカの企業を買収したというニュースがあり、海外で仕事をするチャンスがありそうだというのも入社の決め手になりました。
実際、前職での私のキャリアは、ほとんどが海外です。20年ほどヨーロッパ関係の仕事をし、その後も台湾やシンガポールなどで、海外子会社の立ち上げや立て直しの仕事を主にしていました。
前職では、先輩方にさまざまなことを教えてもらい、私自身もたくさんのことを学びました。2015年から赴任したシンガポールでは、アジアのエネルギッシュな若い人たちと接し、私は次の世代に何を残せるだろうと考えるようになりました。ただ、前職では、立場的にだんだんと現場に出る機会が減り、希望に沿った仕事をすることが難しくなっていきました。このまま一つの会社に居続けても、役に立てることはないのではないか。新天地で新しいことができないだろうかとの思いが募り、妻の出身地である十勝への移住も念頭に置いて、北海道で転職先を探し始めました。
大変な方が、やりがいもある。地域金融機関のきめ細かいサポートで、納得の転職を果たす
最初に面談した北海道共創パートナーズの担当者と、帯広信用金庫様の担当者である木村さんとの出会いが、私をここまで連れて来てくれたと言って過言ではありません。お二方には、面談に臨む前からきめ細かくフォローしていただきましたし、やりとりの中で北海道を盛り上げたいという強い思いが伝わってきました。私自身は東京出身ですが、妻の出身地へ移住して仕事をしようと思うのであれば、地域のお役に立ちたいと思うようになりました。
十勝バスの前に何社か紹介していただいた企業があり、面接もさせていただきましたが、どこもとても良い会社でした。良すぎて、私が入社する意味を見いだすことができなかったほどです。十勝バスを紹介されたときは、きっと大変な業界なのだろうと感じました。地方の公共交通で、しかもコロナ禍で大きな打撃を受けたバス事業です。だからこそ、私に貢献できることがあるのではないか。そう思うと、アドレナリンが出るような感覚を覚えました。大変なほうが、やりがいもある。地域の方の生活になくてはならない公共交通という事業に共感したこともあり、十勝バスにお世話になることを決めました。
違いがあるのは当たり前。互いを理解して、尊重しあうことから始まる
転職に際し、REVICareerの仕組みの中に地域をよく知る伴走者がいることは心強いことだと思います。特に私の場合は、帯広信用金庫様の木村さんが転職活動をサポートしてくださったのが、良いご縁に繋がったと思えるようになりました。もともと十勝バスと帯広信用金庫様のつながりは強く、実際に仕事を始めた後も地域の信用金庫と地域の企業としてのお付き合いは続いています。
前職に比べれば、会社の規模は売上も組織も小さくなりましたが、私が前職で販売会社をつくるためにハンガリーへ赴任したときは会議室のような場所からのスタートでした。私以外は現地の人。そういうところから事業を作り上げた経験があるので、規模の大小はあまり問題ではありません。
また、業界の違いも、常に「違う」ということが当たり前だと思って仕事をしてきましたので、問題ではありません。ベルギーにいたときは、一番多いときで35カ国籍の人がいる環境で働いていました。国籍も宗教も歴史も違う人たちが集まっているなかで、お互いを理解して、尊重しあい、自分も意思表示して、議論を重ねて、コンセンサスをとりながら仕事を進めてきた経験があります。
十勝バスに入社して、業界の特徴や地域の慣習など、知らないこともたくさんありますが、それは聞けばいいことです。十勝バスの文化は私には新鮮であり、知ることが楽しい時期です。1年経ったら馴染んでしまうと思うので、会社の体制に関しても疑問があればどんどん質問しています。ときは失礼なことも言ってしまうかもしれませんが、「なるほど」と思うことがあれば、それをうまく使っていただければいいのではないかと思っています。
100年後も地域で愛される、元気な十勝バスを目指す
平日は帯広のアパートで単身暮らし、週末を上士幌町で妻と過ごしています。十勝は、空が広くて、ほんとうに素晴らしい場所です。散歩途中に景色を見ているだけで、十勝に来た甲斐があると感じています。十勝の方は気づいていないようですが、本当に素晴らしい景色なんですよ。
妻からは、家で庭いじりをするのは週末だけでいい、これまでの経験を今の仕事に存分に活かすようにと言われています。私もそう思います。年齢的にもあと何年仕事ができるかわかりませんから、持っているものはすべて出して貢献するつもりです。
社長とは、100年企業のさらにその先の100年を見据えた話をしています。当然、我々は生きてはいないけれど、それでも存続する会社、地域の皆さんに愛される会社、地域で必須とされる会社にしましょうという話をしました。そのための仕組みづくりに取り掛かっています。
自分が引退した後に、整備された十勝バスが元気に走っている姿を見られる世界を目指したいと思っています。
帯広信用金庫
地域経営サポート部推進役 木村 勇哉 様
経営人材の採用にREVICareerを活用
帯広信用金庫は北海道帯広市に本店を置く信用金庫です。1916年に地元経済人たちによって創立され、十勝のみで100年超、金融を中心に地域の事業者様のご支援をさせていただいています。当庫が有料職業紹介事業の許可を取得したのが2023年2月。4月から実際に事業を開始いたしました。人材紹介については地域経営サポート部において5名体制で対応しており、経営人材については両手型で対応しています。
事業を始めた当初からREVICareerに登録をさせていただきました。当庫では、日々お客様と接する営業店職員がお客様の課題をキャッチアップし、それをシートに起こしたものがトスアップされます。その後、営業店職員と地域経営サポート部の職員が一緒にお客様へ訪問し、人材の課題であれば、人材紹介事業の利用検討を提案いたします。
REVICareerに登録した動機の一つに、給付金制度があります。優れた人材は豊富な経験やスキル、能力を持ち、現職でも高い役職に就いていることが多いのですが、地方での採用となると年収条件が課題になります。中小企業も、経営の高度化や価値向上のためにこうした人材を求めていますが、地方では年収の相場が低いため、候補者が期待する年収を提示できないケースがあります。このような状況で、REVICareerの給付金制度が活用できる仕組みは、企業にとっても候補者にとっても魅力的であり、当庫が登録を決めた大きな理由の一つでもあります。
REVICareerの利用が、企業と人材のマッチング実現の鍵となる
十勝バス様では、長年経理財務を統括してきた役員の方が定年退職されましたが、そのポジションを担える後任が見つからず、人材不足が課題となっていました。十勝バス様から経営人材が必要だというお話を伺った時点で、当時候補者であった葉梨様ともすでに接点がありました。十勝バス様のお話を伺ったその場ですぐ「葉梨様が最適ではないか」と感じ、ご紹介しようという流れになりました。
地方の中小企業では管理職を含む中核人材が退職すると、事業運営が不安定になることが少なくありません。そこで当庫では、経営者や管理職といった経営の中核を担う人材を「経営人材」と定義し、事業の安定化と継続を支援するための人材マッチングに取り組んでいます。
葉梨様の前職でのご経験やお人柄は大変すばらしく葉梨様が十勝バス様に入社したら、事業に大きく貢献できると確信していましたが、課題となったのは年収の設定でした。前職でのご経験を踏まえて、経営人材にふさわしい年収を提示するためには、既存の組織体制の調整が必要で、採用に至るかどうかのポイントの一つとなっていました。今回は、REVICareerの給付金制度を活用することで解決。REVICareerを利用することで、企業と人材のマッチングがうまくいき、結果的に採用の実現につながりました。
双方の目線合わせに重点を置いた丁寧な伴走が、採用につながった
今回の成約に至るプロセスは、時間がかかりましたが、それは困難というよりも、重要なポイントを丁寧に進めたためです。特に重視したのは、求人企業の経営課題をしっかり捉えることでした。単に「人材を紹介する」という視点ではなく、その人材を採用することで具体的にどのような経営課題を解決できるのかを明確にすることに重点を置きました。
十勝バス様とは、「なぜこの課題を人で解決する必要があるのか」について、時間をかけて話し合い、その内容を整理しました。候補者の葉梨様には、会社の経営課題や概要をまとめた資料をプレゼンしました。プレゼンにより、葉梨様がご自身のご経験やスキルをどのように発揮できるかを具体的にイメージできるよう心掛けました。大切にしたことは、双方の目線を合わせることでした。
最初はオンラインで面談を実施し、その後、対面での面談を行いました。社長や顧問を交えた面談後には、葉梨様の疑問点を解消するため、必要に応じて会社に確認を取り、適切に情報を共有しました。また、会社側からの意見や葉梨様への期待についても目線を合わせる努力を続け、最終的には、双方の信頼と納得を得た上で採用までつなげることができました。
経営人材に特化した人材紹介事業を通じて、事業者を見る視点が変わった
人材紹介事業は、求人企業からの依頼を受け、その企業に適切な人材を紹介することで成り立つビジネスですが、そこには大きな責任があります。この責任には、企業に対する「紹介責任」と、転職という人生の大きな決断をする候補者への責任が含まれます。転職はライフイベントの一つであり、その結果が「失敗だった」と思われるのか、「転職してよかった」と感じてもらえるのかは、その方の人生に大きな影響を与えます。したがって、企業と候補者の双方の人生に関わる仲介者として、適当に対応することは許されないと強く感じています。
人材紹介の業務に携わる中で、事業、組織、お金、人のつながりが非常に密接であることを強く実感しています。全ての職員が人材領域の専門性を有する必要はありませんが、私自身は、この業務を通じて事業者様を見る視点が大きく変わりました。経営層に特化した支援を行っているからこそ、お客様の事業にプラスの影響を与える仕事をしているという実感があり、大きなやりがいとなっています。
将来的には、企業が自ら採用力を高める支援や、組織そのものへの働きかけが必要になるかもしれません。地域の金融機関がHR領域全般を担う時代が来るかもしれないとも考えています。